HDLアポタンパクの分解は健常人であっても低い割合で起こっていると考えられる。さらに、HDLアポタンパクの分解速度が比較的速い人では低HDL値を示し、動脈硬化性の血管病変を起こしやすいと推測される。 これまでに、健常人の血漿をグラジエントポリアクリルアミドゲル電気泳動(NativeグラジエントPAGE)し、HDLアポタンパクA-1およびA-2に対するポリクローナル抗体を用いてウェスタンブロットを行ったところ、HDLとされている範囲より遥かに移動度が大きく粒子径の小さな位置にこれらの抗体と反応するタンパクのバンドが複数検出された。これらはすべて、これまでに報告のない新しいバンドであった。これらのバンドは銀染色およびクマシーブリリアントブルーによるタンパク染色では染色性が悪く、脂質を染色するズダンブラックでも検出されなかった。 次に、健常人血漿について、タンパクの良い分離が得られる等電点/SDS二次元電気泳動を行った。二次元泳動ゲルをタンパク染色した結果、HDLのapoA-Iに相当する28kDaの位置にCBBでpI5.2-6.0の範囲に、銀染色ではpI4.6-6.2の範囲にスポットが検出された。 さらに、apoA-1のポリクローナル抗体を用いたウェスタンブロットを行った。その結果、28kDaのスポットは抗apoA-I抗体と反応し、銀染色よりさらに広くpI4.3-6.8の範囲で検出された。従って、apoA-Iには広い範囲の等電点を示すisoproteinが存在することが明らかになった。 また、いずれの検出法においてもpI5.7に大きなスポットが見られたが、特にウェスタンブロットでこの位置に分子サイズの異なるスポットが複数観察された。この複数のスポットは市販のapoA-I標品でも観察され、従ってこれらはapoA-I分解物である可能性が高い。現在、これらのタンパクの同定を進めている。
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