本研究は、分子疫学のデザインを用いて人間の生体内で生成される8-OH-dGのレベルに影響を及ぼす因子の探索を行なうことを目的としている。本研究では標的指標の抽出に、HPLC-ECD(High Pressure Liquid Chromatography coupled with Electro-Chemical Detection)を用いるため、その精度について十分な吟味・確認が必要とされる。本年度においては、HPLC-ECDの調整を行ないながらも、平行して当該テーマに関連する資料による予備的測定・分析を行い、その妥当性と信頼性について検討を行ってきた。まず、脳虚血状態におけるIndomethacinの抗酸化作用を検討するため、Gerbilの海馬における8-OH-dGレベルを測定したところ、Pre-Ischemic時にIndomethacinを注入した群の測定値は、Ischemia群およびSham群に比べて有意に低く、その抗酸化作用を示唆していた。また、この分析においては、Back-Groundの数値も低く、妥当な測定結果であると考えられた。同じく、分析精度およびDNA抽出の新しい技法に関係するテーマとして、異なるDoseのγ線(20〜60Gy)を照射したヒトの肺がん細胞(A549)から、末梢白血球中DNAにおける8-OH-dGMPレベルをそれぞれ測定した。その結果、γ線のDoseと8-OH-dGMPレベルは極めてLinearな関連性を示しており、なおかつBack-Groundも低くなっていた。以上の予備的分析の結果を報告した一方で、本研究テーマにおける資料収集なども進めながら、運動および生活習慣の間隔尺度および順序尺度によるデータ収集・分析と、同一対象者の血中および尿中8-OH-dGの資料分析を進めている。
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