研究計画に基づいて、作業者の動きが有害物への曝露に与える影響を調べる上で、作業現場において個人曝露濃度の変動の測定結果を即時表示できるシステムの開発が本研究の遂行や、また職場改善に有効であると考えられた。従来の粉じん濃度の経時変化の測定では測定終了後に結果を出力する方法により、ビデオ撮影画像などと関連づけることが行われていた。しかし本研究のように個人曝露濃度と作業現場の多様な状況との関連を調べる場合には、濃度測定結果の出力をより迅速に行うことによりそのような関連づけをその場で行うことが有用と考えられた。また濃度測定結果がリアルタイムに把握できれば、実際の作業現場での改善点の把握や対策の効果判定に有効であると考えられた。そこで、個人曝露粉じん濃度のリアルタイム表示・警報システムを新たに開発し、自動車部品等を製造している鋳鉄鋳造作業場においてその適用試験を行った。その結果、作業の様子と関連づけて曝露リスクを迅速に評価でき、職場改善にも有用であることが実際に確かめられた。またこの測定システムにおいては作業者も濃度レベルをリアルタイムに把握できるようにすることにより、作業者自身による作業行動の自発的な変容を速やかに進める可能性も見い出された。これらの検討成果は学会(日本労働衛生工学会2002年11月)で発表し、また投稿論文にまとめた。この手法を用いた測定を進めていく上で現在まで把握された成果としては、曝露濃度が比較的低い作業環境では短時間の高濃度曝露ピークが存在する場合も多く、作業位置や周辺気流などの微妙な変化によって、そのような曝露状況は大きく改善しうることなどが挙げられる。
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