当研究所では焼却施設労働者の血中ダイオキシン類濃度を測定し、労働者の曝露状況を調査している。本研究では、ダイオキシン類調査のための採血と同時期に採尿を行い、ダイオキシン類の生体影響指標として期待される尿中エストロゲン類濃度(エストロン(E1)、17βエストラジオール(E2)、16-水酸化体であるエストリオール(E3)、16-ハイドロキシエストロン、カテコール体である2-ハイドロキシエストラジオール、4-ハイドロキシエストラジオール、2-ハイドロキシエストロン、4-ハイドロキシエストロン)と血中ダイオキシン類濃度の関係を検討する。 今年度では焼却施設3ヶ所において労働者28名の尿サンプル(早朝尿)を採取した。持ち帰った試料は固層抽出を行った後、脱抱合体反応を行い、溶媒抽出、GC誘導体化、シリカカラムによるクリーンアップ等を行い測定検体とした。高分解能GC/MSにより尿中エストロゲン代謝物濃度を測定した。尿中エストロゲン代謝物指標と血中ダイオキシン類濃度の関連を回帰分析により解析した。その結果、血中ダイオキシン、ジベンゾフランとエストロゲン代謝物指標の間に有意な相関はみられなかった。血中コプラナPCB濃度とエストロゲン代謝物指標の関連を解析したところ、血中PCB(TEQ)とカテコールエストロゲン/総エストロゲン(カテコールエストロゲンの総エストロゲン代謝物に占める割合)の間に弱い負の相関傾向がみられた。当初、ダイオキシン類とカテコールエストロゲン類の間には正の相関傾向があるのではないかと考えていたが、結果はその逆になった。ただ、検体数が28と少数であるため、来年度はさらに2施設30名の尿サンプルを採取し、データ数を蓄積し、この傾向が本当に正しいのか否かを総合的に検討する。 なお、今回測定した個人結果および全体の調査結果をまとめた個人結果票を作成し、被験者の方に説明を行った。
|