食中毒原因ウイルスのうちヒトアストロウイルス(HAstV)に注目し、迅速で簡便な診断法を開発することを目的とした。検査法の確立にあたってHAstV血清型1〜8型までに存在する共通抗原の存在領域を明らかにすることとした。HAstVのキャプシドをコードするORF2全長とそのフラグメントをプラスミドに組込み大腸菌を用いて組換え蛋白の作製を試みた結果、全長(795アミノ酸)の組換え蛋白は1〜8型まで認識するモノクローナル抗体3A3と反応したが、C末端(363〜795アミノ酸)は認識されなかった。この結果とHAstVの塩基配列上からもN末端に3A3の認識領域があることが考えられたが、N末端(1〜363アミノ酸)の発現クローンを得ることは出来なかった。そこで、全長を発現するクローンをテンプレートにポイントミューテンションを利用した、C末端欠損クローンを作製した。しかしながら、この方法においても蛋白の発現が確認されなかった。全長またはC末端(369〜795アミノ酸)の蛋白発現は確認されたことから、C末端領域に何らかの転写醜節機能が存在することが示唆された。ノロウイルスについても同様の報告がなされ、今回のテーマとした共通抗原の解析を進めることができなかったが、HAstVの転写、複製機構の解明につながると思われた。
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