1992年から2002年までに大阪府内におけるHIV感染に対してリスクの高い行動をとっていると思われる人々を対象に行った抗体検査で陽性となった検体の中で遺伝子解析が可能であったウイルスは31株であった。塩基配列分析からサブタイプを同定した結果、サブタイプBが27株、サブタイプAEが4株であった。V3領域の塩基配列を基に系統樹解析を行った結果、サブタイプBの中でも2001年以降のものについては各株間で多様性が増加する傾向が見られた。また、遺伝的距離が非常に近い2つのグループが確認された。この2グループについてアミノ酸配列について比較を行うと、V3 loop内で同一の特徴をもつアミノ酸の挿入や欠失がみられた。その1つのグループは2001年に検出したサブタイプBの3株であり、アミノ酸の相同性は90〜98%と高く、V3 loopの19番目と20番目の間にIleあるいはMetの挿入、24番目にアミノ酸の欠失が共通してみられた。またもう一つのグループはアミノ酸の相同性は97%と高く、GPGRモチーフ内にIleの挿入という特徴的配列をもつ2株であった。このグループ内のそれぞれの検体は感染者の年齢も違うことより、同一人物ではないが感染源が同一である可能性が高いと考えられた。また、聞き取り調査の結果、同性間性的接触により感染した例も確認され、性的なつながりをもつグループ内での感染の広がりが確認され、性行為による感染拡大をおさえるための働きかけが必要であることが示唆された。
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