研究概要 |
1.外傷性ショックモデルにおけるサイトカイン及びケモカインの遺伝子発現 マウスの両側後肢を90分間圧迫後、開放するいわゆる緊縛性ショックによる外傷性ショックモデルを作成したところ、48時間以内に約90%以上のマウスが死亡した。血清中の肝臓逸脱酵素(ALT)及び尿素窒素(BUN)は、緊縛解放後2時間から著明に上昇した。病理組織学的には、肺、肝臓及び腎臓で好中球の著明な浸潤を確認した。さらに、肝臓及び肺におけるサイトカイン(IL-1α、TNFα)、ケモカイン(MCP-1,MIP-1α、MIP-2、KC)及び接着因子(VCAM-1)遺伝子発現を検索したところ、いずれの物質も、緊縛解放後2時間で最も強い遺伝子発現が観察された。以上のことから、外傷性ショックでは、これらサイトカイン、ケモカイン及び接着因子が重要な役割を果たしていることが明らかとなり、法医実務的にこれらの遺伝子発現を検索することが外傷性ショックを診断する際に、有用となる可能性が示された。 2.アセトアミノフェン肝障害とサイトカイン 野生型マウスとI型TNFレセプター欠損(KO)マウスにアセトアミノフェン(600mg/kg)を腹腔内投与し、急性肝障害モデルを作成した。Aアセトアミノフェン投与後、各マウスの血清ALT値を測定したところ、KOマウスでは、野生型マウスに比べて、肝障害の程度が軽減していた。さらに、病理組織学的に、肝細胞の壊死の程度、白血球浸潤の提訴(好中球、マクロファージ、Tリンパ球)が、KOマウスでは減弱していた。さらに、肝臓におけるサイトカイン、ケモカイン及び接着因子の遺伝子発現も同様に、KOマウスで減弱していた。以上のことから、アセトアミノフェン肝障害ではTNF-I型TNFレセプターを介したシグナルが重要であることが判明した。
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