本研究は日本人に見出された、RH式血液型システムにおける抗原を産生しない遺伝子(-D-)について、どのような機構で発現が起きないかを明らかにするためのものである。原因としては遺伝子の欠損、エクソン内の異常、ハイブリッド遺伝子形成、プロモーター領域の異常などが考えられ解析を行った。その結果、1.抗原決定に関わるエクソン1、2、および5と、多型性を示すイントロン2、8について遺伝子型を解析すると、それぞれの箇所において原因遺伝子の存在が確認され、抗原を発現しないのは大きな遺伝子欠損によるものではないことが明らかになった。2.エクソン内の異常については、すべてのエクソンについて多様な条件の下でPCR-SSCP分析を行い、塩基置換や部分欠失などの異常がないことを確認した。3.RHCE遺伝子が、遺伝子組み換えや、遺伝子変換により部分的にRHD遺伝子に置き換えられたハイブリッド遺伝子の形成によりCE抗原を発現しないことも考えられるため解析を行った。ハイブリッド遺伝子形成箇所は2の結果からエクソン内にあるとは考えにくく、イントロン内で組み換えを起こしている可能性が高いと思われる。組み換えが推定されるイントロンについて、RHD、RHCE遺伝子特異的なプライマーを設定し、long PCRを行う。forward-reverse primerの組み合わせをRHD-RHCEあるいはRHCE-RHD遺伝子特異的primerの組み合わせにしてlong PCRを行い、増幅されればそのイントロン内で組み換えが起きていると考えられる。現在はそのlong PCRの解析法を確立している段階である。今後は引き続きハイプリッド遺伝子形成について解析を行い、プロモーター領域の異常についても解析を行う予定である。
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