全身性自己免疫疾患では核内自己抗原反応性T・B細胞の存在を特徴としている。そこで本疾患におけるCD4^+CD25^+制御性T細胞(Treg)の役割を検討するため、ニワトリ卵白アルブミン(OVA)を全身性に核内に発現するトランスジェニックマウス(Ld-nOVA)と、OVA反応性T細胞受容体発現トランスジェニックマウス(DO11.10)をかけあわせて得たダブルトランスジェニックマウス(DBLTg)を解析した。このマウスではOVA反応性であるクロノタイプ陽性細胞は核内抗原反応性T細胞となる。その結果、DO11.10ではクロノタイプ陽性細胞がCD4^+CD25^-細胞でありクロノタイプ低発現の細胞がTregであったが、DBLTgでは対照的にクロノタイプ陽性細胞がTregで、クロノタイプ低発現の細胞はCD4^+CD25^-細胞だった。こクロノタイプ低発現のT細胞が誕生する過程にT細胞受容体遺伝子再構成の関与が考えられたため、この機構が障害されるT細胞受容体α鎖欠損DBLTgやRAG欠損DBLTgを解析した。その結果、RAG欠損DBLTgの末梢のT細胞は大部分がTregとなっているが、RAG欠損DO11.10マウスの末梢のT細胞はTregを欠きCD4^+CD25^-細胞が占めていた。T細胞受容体α鎖欠損マウスでもほぼ同様に結果であった。 これらの結果から、核内自己抗原反応性T細胞はTregに分化する経路と、T細胞受容体遺伝子再構成が生じ非自己反応性T細胞受容体がつくられCD4^+CD25^-T細胞になる経路が存在し、T細胞の自己反応性が回避される機構があることがわかった。しかし、DBLTgではIgG抗OVA抗体が産生されていた。従って、核内自己抗原特異的B細胞へのヘルプは存在し、DBLTgにおけるクロノタイプ陽性細胞はTregであることから、この細胞群が自己抗体産生に関与している可能性が示唆された。
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