研究概要 |
アトピー性皮膚炎は通常は生後1-2ヶ月後より発疹を認める。年長になると軽快治癒することが多いが、なかには徐々に重症化し成人に至る。高いIgEが患者血清中、皮膚炎局所に認められることからTh2サイトカインが関与していると考えられていた。我々はIL-18がTh1サイトカインだけでなくTh2サイトカイン、IgE, IgG1産生を誘導することをトランスジェニックマウス(TG)で証明した。これらの事実はIL-18をマウス皮膚局所に過剰発現させるとヒトアトピー性皮膚炎様皮膚炎が出現する可能性がある。そこで我々はヒトkeratinocyte promoter (K5)を用い皮膚特異的発現IL-18TGを樹立した。このTGは皮膚炎を発症する。その皮膚炎発症パターンは生後10日に発症のピークを迎え4週以降には一旦、皮膚炎は見られなくなる。15週以降は脱毛を伴った皮膚炎発症する週齢に応じた2峰性の発症パターンが見られた。病理学的には生後10日の皮膚組織には、表皮肥厚、角質増殖、真皮内に好中球を含む炎症性細胞浸潤を認め、表皮基底部には軽度の海綿状態が存在し、表皮向性の好中球浸潤により角質内膿瘍形成が形成されていた。15-20週齢では、背部、顔面周囲、尾等の皮膚に広範囲に潰瘍化を認め、非潰瘍部にも表皮肥厚、角質増殖と角質内膿瘍形成が顕著であった。これ以降では表皮変化は比較的、軽度に留まるが、毛包炎ないし慢性皮膚炎像を認め、局所的な脱毛が雄のほぼ全例と雌の20-40%に観察された。以上より、皮膚局所におけるIL-18過剰発現が、マウスの自己免疫性皮膚炎を形成したものと考えられた。このTGマウスの皮膚病理所見は、ヒトのアトピー性皮膚炎のみならず、乾癬や膠原病に随伴する皮膚症状とも共通した所見を含んでおり、それらの疾患の病態解明に有用なモデルと考えられる。
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