研究概要 |
全身性エリテマトーデス(SLE)においては、ステロイド剤や免疫抑制薬などの薬物長期連用を内科的治療法の主体とするが、多剤耐性獲得のため治療に難渋する症例、副作用のためステロイド薬の減量を要するにも関わらず長期にわたってステロイド薬の減量が困難で治療に苦慮する症例を少なからず経験する。申請者らはステロイド役抵抗性SLE患者のリンパ球上には細胞表面上に存在して薬剤の細胞外汲み出しに関与するP-糖蛋白質が強発現していること、さらに未治療時・発症早期のSLE患者のうち、疾患活動性の高い症例において、P-糖蛋白質の高発現を呈す傾向があることを見出している。一方、活動期のSLE患者抹消血リンパ球では細胞質IL-2、IL-4が著しく発現亢進しており、これらのサイトカイン刺激によるP-糖蛋白をcodeするMDR-1遺伝子の発現につき、抹消血リンパ球・T細胞株を用いて解析した。IL-2,4などのT細胞の活性化に関与するサイトカイン刺激により1)MDR-1遺伝子特異的転写因子YB-1が活性化されDNA結合モチーフへ結合することをEMSAにて確認した。さらに、2)MDR-1遺伝子mRNAの発現が誘導され、3)その結果リンパ球表面上のP-糖蛋白の発現増強が認められた。また、4)P-糖蛋白質の発現誘導により細胞内ステロイド濃度の低下がみられた。以上より、IL-2,4などのサイトカイン刺激により誘導されるP糖蛋白の発現が活動期SLEにおけるステロイド抵抗性に関与することが示唆された。今後、正常リンパ球へのYB-1遺伝子導入が多剤耐性遺伝子発現、ステロイド薬や他の免疫抑制剤、DMARDs排出に与える影響や、薬物排泄に対するP糖蛋白質特異的拮抗薬(シクロスポリン及び同誘導体PSC833、カルシウムチャンネル阻害剤及び同誘導体DHP等)の効果などにつき検討する予定である。
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