SLEの治療に於いて治療不応性は重要な問題点である。今回、活動期SLE症例に於ける治療不応性獲得の機序、並びに、その克服の可能性を検討した。(1)健常人末梢血リンパ球は多剤耐性遺伝子(MDR1)産物であるP糖蛋白質を発現しなかった。(2)SLEリンパ球は、P糖蛋白質発現率は高く、活動期症例で高度で、SLEDAIと正相関した。発現量は、ステロイド薬0.5mg/kg以上に不応性の活動期で高値であった。(3)リンパ球をIL-2やIL-4等で刺激すると、MDR1特異的転写因子YB-1の核内移行、MDR-1転写、P糖蛋白質発現、細胞内ステロイド濃度低下が誘導された。(4)活性化リンパ球の細胞内ステロイド濃度は、P糖蛋白質拮抗薬(シクロスポリン、PSC833、MS209)の前処理にて回復した。(5)ステロイド不応性を呈した活動期SLEのP糖蛋白質発現は、パルス療法を含む強化療法の反復にて減弱し、治療反応性回復、臨床症状改善が得られた。SLEリンパ球のP糖蛋白質発現の評価は、治療不応性の臨床的指標として有用であり、強化療法の適応決定やP-糖蛋白質拮抗薬による不応性解除によるテーラーメード医療の実践の可能性が示された。
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