研究概要 |
タイ、コンケーン地区のSSc患者5人より、同意のもと末梢血10mlおよび診断時の皮膚生検検体の1部を入手した。末梢血リンパ球および皮膚組織より、各TCR Vβファミリーごとに増幅されるfamilial RT-PCRにてTCRβ鎖遺伝子を増幅した。得られたPCR産物を、TCRCβ領域に特異的なプローブを用いてサザンブロッティング法にて検出した。末梢血では、解析した5人全てにおいてサザンブロッティングにてTCRβ鎖遺伝子転写物が検出された。SSc1およびSSc2では解析した22のVβファミリーが殆ど全て使用されていたが、SSc3-5については1部のVβファミリーのみが使用されていれていた。サザンブロッティングで得られたパンドの濃さを定量、数値化しVβ1-20全ての合計を100%とした場合の各Vβの使用比率(%)を算出した。全ての患者末梢血にて共通に高頻度に使用されているTCR Vβファミリーは認められなかった。SSc3においては皮膚検体からもTCRβ鎖遺伝子転写物が検出されたが、他の患者の皮膚検体からは検出されなかった。SSc3の皮膚浸潤T細胞のTCRVβフアミリーの使用比率には偏りが認められたが、末梢血のそれとは大きく異なっていた。末梢血でほぼ全てのVβを使用していたSSc1,2と、Vβの使用比率に大きな偏りを見せたSSc3-5間の違いを臨床データから比較したところ、罹病期間、特に主病変部である皮膚の罹病期間の短い患者においてVβの使用比率が大きく偏っていることが分かった。得られたPCR産物を一本鎖高次構造多型(SSCP)により分離し、T細胞のクローナルな増殖の有無を検討した。その結果解析した全てのSSc患者の末梢血においてT細胞がクローナルに増殖していることが分かった。SSc3の皮膚浸潤T細胞においてもT細胞のクローナルな増殖が検出された。しかし末梢血とはSSCPでのバンドの位置が異なっており増殖クロノタイプの違いが示唆された。また末梢血の検体では、SSCP法で太いバンドが検出される検体ほど前述のTCR Vβ使用比率は偏っており、T細胞のクローナルな増殖によりVβ使用比率に偏りが見られることが示された。このTCRβ鎖CDR3領域を増幅したPCR産物の塩基配列を調べ、アミノ酸配列に翻訳した。末梢血および皮膚の検体で、検討したどのVβにおいても同一の配列カミ複数個検出され、T細胞がクローナルに増殖していることが確認された。SSc3の皮膚の解析では増殖クロノタイプの頻度が高くVβ8では1つのクロノタイプしか検出されなかった。末梢血と皮膚ではTCRβCDR3の配列は全く異なっており増殖T細胞クロノタイプの違いが示された。またこれまで検討した中では異なる患者から同一あるいは相同性の高いTCRβCDR3の配列は検出されていない。
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