研究概要 |
膵癌や胆道癌の多くは進行癌の状態で発見され極めて予後不良であることから、治療には化学療法、放射線療法をはじめとする非手術療法の発展が必須である。しかし、膵胆道癌では、化学療法剤に対する感受性が極めて低いこと、放射線抵抗性の腺癌であるため高線量が必要であるのに対して、解剖学的に治癒期待線量の照射が困難であることなどから、治療成績向上を得られていない。AKTは、生存シグナル経路の活性化を介してアポトーシス抑制や細胞増殖促進に働くセリン/スレオニンキナーゼであり、近年、放射線や化学療法剤における関与が示唆されている。我々は、膵癌由来細胞株において、constitutively active型AKTがインスリン様増殖因子I受容体(IGF-IR)発現を増加させること、IGF-IR発現増加を介して膵癌細胞の浸潤能亢進を引き起こすこと、さらにdominant negative型AKT遺伝子導入によってIGF-IR発現および浸潤能が低下することをこれまでに明らかにしてきた(Tanno S, et al.: Cancer Res,2001)。本研究において、胆管癌外科切除組織では、高率に活性化型AKTが胆管癌細胞で発現しており、胆管癌由来細胞株に活性化型AKTを強発現させると放射線抵抗性を獲得すること、反対にブロックによって放射線感受性を示すことを明らかにした(Yanagawa N, et al : AACR,2002,suppl)。膵胆道癌における化学療法剤や放射線の感受性を制御する、AKTを介した新たな生存シグナル経路の活性調節機構の解明は、新たな分子標的治療に貢献すると考え、膵胆道癌におけるAKT発現や活性レベルを明らかにし、AKTを介する生存シグナル経路の解析をさらに行っている。
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