研究概要 |
平成14年度は日本における肝細胞癌の頻度が高い要因として、ウイルス側と宿主側の両方の面から検討した。最初に米国NIHのDr.Alterの10年以上の長期保存血清を使用してC型肝炎ウイルス(HCV)の塩基置換が分子時計の原理に基づいて起こる事を証明した(Tanaka Y,PNAS,2002)。この原理を利用する事により、日米におけるHCV拡散時期に約30年の違いがあり、日本では1930年以降に、米国においては1960年以降に増加している事を分子進化学的に実証した(Tanaka,PNAS,2002)。 Kiyosawaらの報告によると、HCV感染後約30年の経過で肝細胞癌を発症しており、このHCV感染期間が肝細胞癌発生の重要なリスクファクターの一つと考えと、今後米国におけるHCV関連肝細胞癌数が現在の日本のように増加していく事が予測された。宿主側の因子として慢性炎症、肝線維化や発癌に関与する複数の遺伝子single nucleotide polymorphism (SNPs)を検討した。中でも、H.pyroli,胃癌との関与が報告されているIL-1BのSNPsと肝細胞癌との関与が示唆されたので報告した(Tanaka,JID,2003)。すなわち、慢性肝疾患364例(F0-2;116,F3-4;102,HCC;146)及び年齢性差をマッチさせたコントロールとして健診受診者230例を対象としたcontrol studyを行った結果、IL-1B-511T/TはC型肝細胞癌への進展に関与している可能性が示唆された。IL-1B-511T/Tは胃癌との関与さらにはIL-1Beta産生にも関与していることが最近報告されており、今後はこの肝癌に関与したIL-1B-511T/Tと肝臓におけるIL-1Betaの発現量等を検討し、そのメカニズムを検討する予定である。
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