肝細胞長期培養系またはSP細胞を用いた肝細胞分化・増殖に関与する諸因子の動態についての検討 (1)通常の培養条件下であれば短期期間で線維芽細胞様に変化してしまう肝細胞を、マトリゲル・サンドウィッチ法による初代培養肝細胞の長期培養法を確立した。このマトリゲル・コラーゲンサンドウィッチ法により、長期間にわたり肝細胞のアルブミン産生・毛細胆管の形成などを確認し、本法により長期間にわたる肝細胞の機能維持が可能になることが確認された。 (2)組織幹細胞であるside population(SP)細胞を肝臓より分離し、マトリゲル・コラーゲンサンドウィッチ法による分化誘導により、肝細胞への分化誘導を示唆するアルブミン産生を確認した。 肝再生におけるアポトーシス制御遺伝子の発現の検討 (3)我々はアポトーシス制御する因子が肝細胞分化・増殖に重要であると推定している。また、肝細胞内に生じる酸化ストレスが長期間にわたる機能維持、あるいは再生過程に対して阻害的に作用することが予想された。酸化ストレスによるアポトーシス誘導過程に対してアポトーシス促進型Bcl-2 family遺伝子Baxが重要であることが確認された。さらに、この過程に介在すると思われる各種シグナル伝達系あるいは転写因子の役割を検討したところ、MAP kinase assayのひとつc-Jun N-terminal Kinase(JNK)が酸化ストレスによるアポトーシスを促進的に働き、転写因子NF-kappa Bがアポトーシス抑制的に働くことを確認した。そこで、肝細胞長期培養系またはSP細胞を用いた肝細胞分化に際してこのような分子群がどのように作用するか検討を開始した。 以上の結果をもとに、本研究では肝臓の組織形成、再生過程を再現し、再生医療への応用の可能性を実現する。
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