研究概要 |
潰瘍性大腸炎を含め,大部分の自己免疫疾患は自己抗原が不明であり,病因解明を困難にしているが,自己抗原の解析を行うことが本症の病態理解,根本治療につながると考え,研究を進めている.さらに,樹状細胞がT細胞の抗原認識の最も初期の段階に重要であり,また,自己抗原に対しては免疫寛容が誘導されることに注目し,樹状細胞を用いた抗原認識の実験系の確立を目指している. 本年度は以下の研究を行った. インフォームドコンセントの得られた手術を施行された活動性潰瘍性大腸炎患者より採血し,その末梢血より,単球を分離し,IL-4,GM-CSFと培養し,未成熟樹状細胞を得た.同患者の切除大腸標本より分離した炎症部腸管上皮細胞をcell lysateとし,CD4OL trimerとともに未成熟樹状細胞にpulseし,成熟樹状細胞へと分化させることに成功した.同患者の末梢血および腸管粘膜内リンパ球よりT細胞を分離し,electroporation法を用いてIL-2 promotor dependent Green Fluolescent Protein(GFP)発現ベクターをtransfectさせた.これらの腸管上皮細胞由来抗原を提示する成熟樹状細胞とT細胞を共培養し,Flow cytometorにて,GFP発現T細胞,すなわち自己反応性T細胞をsortingした.単離された自己反応性T細胞を抗CD3/CD28抗体,IL-2存在下で培養し,cell line化することに成功した. 現在,炎症部腸管上皮細胞cell lysateの2次元電気泳動をspot毎にpeptideとし同患者のB細胞にpulseし,自己反応性T細胞の増殖を促進させるpeptideを検索中である. 次年度はさらに,得られた抗原peptideの質量分析,ペプチドマッチングを行い,さらにそれが,他の潰瘍性大腸炎患者の樹状細胞-T細胞共培養系で再現性があることを確認し,本症の自己抗原の解明に迫ることを予定している.
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