潰瘍性大腸炎を含め、大部分の自己免疫疾患は自己抗原が不明であり、病因解明を困難にしているが、自己抗原の解析を行うことが本症の病態理解、根本治療につながると考え、本研究を企画した。さらに、樹状細胞がT細胞の抗原認識の最も初期の段階に重要であり、また、自己抗原に対しては免疫寛容が誘導されることに注目し、樹状細胞を用いた抗原認識の実験系を用いた。 昨年度までに、インフォームドコンセントの得られた手術を施行された潰瘍性大腸炎患者の末梢血単球由来の樹状細胞を用いて、自己反応性T細胞をsortingし、それらをcell line化することに成功した。 本年度は同患者の炎症部腸管上皮細胞cell lysateをspot毎にpeptideとしてB細胞にpulseし、自己反応性T細胞の増殖を促進させるpeptideの解析を行ったところ、各々の患者につきpeptideが数十個に絞り込まれた。それらのpeptideを質量分析、ペプチドマッチングをおこなったところ、自己由来のもの、および腸内細菌由来と考えられるものにさらに分けられた。 以上より、潰瘍性大腸炎の患者由来のT細胞を増殖させる因子として、自己由来のものと腸内細菌由来のものが存在することを本研究で解明した。潰瘍性大腸炎はhomogenousな疾患ではなく、様々な因子が病態に関わっていると考えられているが、本研究で、その内でも、自己抗原と腸内細菌が重要であることが、証明できた。
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