研究概要 |
ユビキノンを投与したアルコール肝障害の脂質過酸化の検討 【目的】 マウスを使った実験を行う前にまず、ヒト血清を用いたin vitroの実験を行った。強力な抗酸化剤であるユビキノールを、過栄養性脂肪肝とアルコール性脂肪肝患者に投与し、その前後の患者血中のユビキノールとCEおよびCE-OOHを測定し、その差異について検討した。 【対象と方法】 過栄養性脂肪肝、およびアルコール性脂肪肝で通院している患者を対象とした。ユビキノンは1日30mg内服投与した。血中のユビキノールおよびユビキノン、CEおよびCE-OOHを測定した。ユビキノール、ユビキノンの測定は、yamashitaらの方法に、CEおよびCE-OOHの測定はyamamotoらの方法によった。CEおよびCE-OOHは、CE20:4およびCE20:4-OOH, CE18:2およびCE18:2-OOHである。CEの過酸化の評価は、%CE-OOH/CEで示した。一般的な生化学データを同時に測定した。これらのデータをユビキノン服用前後で対比検討した。 【結果】 ユビキノン投与後の血中ユビキノンとユビキノールを合計したTotal Q-10は、ユビキノン投与前に比較して、過栄養性脂肪肝の1例を除き、全例で上昇した。ユビキノン投与後の%CE20:4-OOH値は、過栄養性脂肪肝、アルコール性脂肪肝で共に不変で、前後の統計学的な有意差は認めなかった。 【考察】 CE20:4-OOHが、過栄養性脂肪肝で高値を示した1例が、ユビキノン投与後に唯一、血中ユビキノン値の低下と、%20:4値の低下を示した。この1例は体重変化無いも、γ-GTPは178 IU/Lから81 IU/Lに低下した。過栄養性脂肪肝ではユビキノン投与で%CE20:4-OOH値は不変、もしくは高値を示したものは抑制できたと考えられた。アルコール性脂肪肝症例では、投与後に1例、%20:4値が5倍以上に上昇する症例がみられた。この症例は、ユビキノン開始後に飲酒量が40g/日から60g/日に増加し、γ-GTPは、100台前半から247 IU/Lに上昇していた。これによって30mg/日のユビキノンではアルコールによる脂質過酸化を抑えられなかったと考えられた。ユビキノンと脂質過酸化物は、脂肪肝の病態を反映する指標の一つになると考えられた。
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