研究概要 |
【目的】HCVの主な感染ルートは,血液感染であるが,性交感染も稀に存在する。しかしこの経路によるリスクファクターは不明である。一方,粘膜扁平苔癬の発現は,口腔(OLP)だけでなく性器にも発生するが(性器LP),国内のvulvo-vaginal-gingival syndromeの報告はほとんどない。OLP患者の6割以上にHCV感染を認め,病変局所でHCVを検出できることから,口腔-性器LPの合併率を調査し,配偶者のHCV感染の有無を調査することにより,HCVの性交感染の可能性を検討する。 【対象・方法】婦人科受診を同意したOLP24名(女性,平均年齢67.6歳,HCV感染者14名,HCV非感染者10名)に対して,性器LPの有無の診査を行い,対象者並びに配偶者に対してHCV感染・肝疾患の有無を精査した。 【結果】性器LP合併率は41.7%(10/24名)で,HCV感染の有無による有意差はなかった。検査が行えた10組の夫婦のうち,口腔-性器LPを認めた女性(HCV+)の夫(HCV+)に,びらん型OLP症例が認められた。 【結論】vulvo-vaginal-gingival syndromeを報告し,性器LPによるHCV感染の可能性を示唆した。臨床医は,OLP患者に対し,他部位での合併にも注意し,助言を行うことが大切である(Int J Mol Med. 2002;10:569-73)。
|