研究概要 |
【目的】HBVあるいはHCV感染者における肝外病変として扁平苔癬を含むシェーグレン症候群(SS)の合併率を検索した。【対象と方法】対象は,久留米大学消化器病センターを受診した110名のHBVあるいはHCV感染の慢性肝疾患患者である。インターフェロン(IFN)治療中の患者や自己免疫肝炎、あるいは内服加療によってドライマウスの副作用を招くような患者は除外した。HBV感染者は29名,HCV感染者は81名であった。HBV感染者の内訳は,無症候性キャリア1名,慢性肝炎19名,肝硬変9名で,HCV感染者の内訳は,慢性肝炎63名,肝硬変12名,肝細胞癌6名であった。【結果】HCV感染者におけるドライマウス自覚者は27.2%,サクソンテストあるいは唾液腺シンチによって他覚的にも唾液分泌量が減少していたのは23.4%,抗SS-A抗体あるいは抗SS-B抗体どちらかが陽性であったものは,22.2%であった。HCV感染者におけるSS合併率は,ヨーロッパ基準では25.9%,日本の基準では21%と高率であった。HCV感染者における扁平苔癬の合併率は13,6%で,扁平苔癬とSS同時発現率は,8.6%であった。一方。HBV感染者におけるSS合併率は3.4%(ヨーロッパ基準,日本の基準),扁平苔癬の合併率は3.4%で,扁平苔癬とSSを同時に発現した患者は認められなかった。【考察並びに結論】HCV感染者には,HBV感染者よりも有意にSS発現率が高いことを報告した。SS診断基準は,国際基準がないため,どの基準を使用するかは,主治医に委ねられているのが現状である。現時点での診断基準は数多くありすぎるため,どの基準を用いるかによって,診断確定率が異なること,唾液分泌機能検査のうち最も簡便に行えるガム・サクソンテストには保険適応がないこと,口腔外科やRI施設を持たない病院では,検査が行えない項目が多すぎること,診断確定までに患者が受ける外科的処置や費用面での負担が大きいことなどが,問題点としてあげられる。従って,潜在するSSは多く,見過ごされている可能性があり,扁平苔癬と同様にHCVの肝外病変としての認識が大切である。(Nagao et al.,J Gastroenterol Hepatol 2003:18:258-266)。
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