研究概要 |
肝硬変モデルラットを作成し、その後TGF-βシグナルを抑制させる変異型TGF-β II型受容体発現アテノウイルス(AdTβ-TR),コントロールアデノウイルス(AdLacZ)或いは生食水をラット尾静脈より投与し遺伝子導入を行った。遺伝子導入後1,2,3,5,7日目にラットを屠殺し、肝組織、血清を採取した。昨年度は肝再生因子HGF, TGF-αについて定量的RT-PCR法を用いてサイトカインの経時的変化を測定したが、今年度はEGF, IGF-Iについても更に追加し経時的変化を測定した。各サイトカインのプライマー設定はラットEGF, IGF-Iに対する特異的遺伝子配列より決定した。変異型TGF-β II型受容体遺伝子導入後の肝臓内でのEGF, IGF-IのmRNAレベルでの遺伝子発現は、TGF-α,HGFと比較し共に早期に発現の増加を示し、EGF, IGF-I共に1日目より有意に発現の増加を認め、3日目まで増加し続けた。対照群(AdLacZ投与群と生食水投与群)では有意な発現の増加を認めなかった。今後は遺伝子導入後7日目以降も同様に検討を進めていく予定である。またコラゲナーゼ潅流法を用いての各種細胞分画分離後、各種細胞分画群での遺伝子発現についても同様の検討を行ってきたが、1)肝硬変モデルラットの肝硬変の進行度に個体差を生じ、うまく各種細胞分画を分離できなかったこと、2)うまく分離できたと仮定し分離後の各サイトカイン遺伝子発現を検討した結果、これも同様に個体差をかなり大きく生じてしまい、結果を十分に評価できなかったこと、3)ラット肝臓より各種細胞分画を分離し、分離後mRNA採取までの過程に時間を要してしまうため、その間にmRNAの発現の変動を期している可能性があり結果を十分に評価できない、と判断しin vitroの実験系を現時点で断念した。
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