ヒトの臍帯血、末梢血から濃度勾配分離法にて単核球分画細胞を分離し、ゼラチンコートした培養皿上で下垂体抽出液を含む培養液で採取した単核球を培養した。これらの細胞の一部は培養皿に接着し、培養後七日目頃より中心部が球形の細胞、周囲には紡錐形の細胞で構成されるコロニーが観察され、それは胎生期に見られる血島に類似した形態であった。また一部では血管様のネットワークを形成することもあった。その後中心部の球形の細胞は脱落し、周囲の紡錐形の細胞が増殖した。 紡錐形の細胞の表現型は、免疫化学染色の結果よりFlk-1、Flt-1、Tie-2、CD34が陽性であり、血管内皮系の細胞と考えられた。またCD34、CD133が陽性であることから、幹・前駆細胞の様なやや未熟な細胞と考えられた。以上のことから、紡錐形の細胞は血管内皮前駆細胞と考えられた。 血管内皮前駆細胞を回収し、メイ・ギムザ染色にて細胞を観察すると、血管内皮前駆細胞はやや大型の細胞質を持ち、偏在した紡錐形の核を持つ好塩基性の細胞であり、培養前の単核球とは明らかに形態が異なっていることが分かった。 血管内皮前駆細胞と肝再生との関与を調べるため、雄性ヌードマウスに四塩化炭素を腹腔内投与し、肝障害モデルマウスを作製した。赤の蛍光色素にてラベルした血管内皮前駆細胞をモデルマウスに投与すると、蛍光標識された血管内皮細胞は広範な肝壊死が起こっている中心静脈周囲に多数観察され、一部は肝壊死周囲の類洞に観察された。以上のことから血管内皮前駆細胞は再生肝に何らかの役割を担っているが示唆された。
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