研究概要 |
Helicobacter pylori(H. pyori)ATCC43504持続感染モデルにおいて、感染成立後1,3,5,7,9ヶ月の各時点で、活性化白血球の組織浸潤抑制作用が確認されているIS-741 10mg/kgを14日間経口投与したところ、蒸留水を同時期に同期間だけ経口投与したコントロール群に比して、IS-741投与群では組織学的胃炎の改善を示したという平成14年度の結果をもとにして、引き続き感染成立後12,14,16,18,20,24ヶ月の各時期においてIS-741投与群とコントロール群での組織学的胃炎の程度を比較した。コントロール群では、リンパ球を主体とする炎症細胞浸潤を持続して認めたが、IS-741投与群では炎症細胞浸潤の抑制とともに粘膜上皮の脱落等の組織学的胃炎の改善傾向がみられた。しかしながら、これらの組織学的胃炎の改善の程度は、感染後期間が長期になるほど軽度であり、発癌予防としての組織学的胃炎沈静化のためには、早期に炎症抑制物質を使用する必要があることが示唆された。また、apotosisの評価として行ったTunel染色についても、IS-741投与群ではコントロール群との比較において、明らかにapotosis陽性細胞が少ない傾向が各時期ともにみられたが、組織学的胃炎と同様に、感染後期聞が長期になるほどIS-741によるapotosis抑制作用は軽度であった。以上の結果よりIS-741による組織学的胃炎とapotosis抑制作用は、H. pylori感染早期であるほど顕著であり、感染期間が長期にわたるほど、その効果が減弱する可能性が示唆された。今後は各時期の屠殺時に採取した血清を使用して、H. pylori持続感染状態で上昇するとされるcytokineのうちIL-6、IL-8などのpro-inflammatory cytokineの測定を行い、IS-741投与群とコントロール群での比較を行う。さらに今後は、H. pylori持続感染モデルの除菌治療群とIS-741投与群での上記内容の比較を行い、IS-741の抗炎症作用を検討する予定である。
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