研究概要 |
細胞内コレステロール輸送の異常を原因とする、ヒトニーマンピックタイプC病(NPC1)では、脂質蓄積に続発して神経原線維変化が形成される。我々はNPC1症例で老人斑沈着を認める症例群を発見、その遺伝子解析より、アポリポ蛋白E (apoeE) ε4ホモ接合体であることを見いだした(Saito et al. Ann Neurol,2002)。この事実をもとに、NPC1^<nih>ミュータントマウスと、apoE e4ノックインマウスの掛け合わせで、アルツハイマー病の動物モデルを作製することが、本研究の目的である。方法として、これら両マウスの遺伝子背景を一致させるため、NPC1^<nih>をC57BL/6NにバッククロスすることでF8を得た。NPC1^<nih>がF10になった時点で、かけあわせ開始予定である。 NPC1^<nih>マウスはバッククロスにより表現型が加速される。ヒトパーキンソン病に出現するレヴィー小体の構成成分である、リン酸化アルファシヌクレインに対する抗体で免疫染色を行ったところ、嗅球に時に陽性突起が出現することを見いだした。この知見から、ヒトNPC1症例を同抗体でスクリーニングしたところ、αシヌクレイン蛋白の異常リン酸化が、脂質蓄積及びタウのリン酸化と関連し、全例に存在することを確認した。さらにapoE ε4ホモ接合体では、Lewy小体の出現までも認めた(Saito Y et al.,J Neuropath Exp Neurol,2004)。またApoE ε4多型の頻度が、NPC1症例ではバックグラウンドに比べ、格段に高いことも見いだした。これらの事実は、NPC1とapoE ε4との密接な関連を示唆している。 以上、NPC1-/- / apoE ε4/ε4マウスの作成は、ヒト中枢神経系老化機序と脂質代謝の異常との関連を解明する上で、極めて重要と考えられ、今後の発展が期待される。
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