研究概要 |
まず心不全患者め心筋において酸化ストレスの発生の有無を調べた。心不全患者において血中の過酸化脂質の上昇や心嚢液中の8-iso-prostaglandin F2alphaの上昇が報告され、酸化ストレスが心不全に関与することが報告されている。しかしながらヒトの不全心筋において酸化ストレスの発生が増強しているかどうか直接の証拠はまだない。さらにβブロッカーによる治療が酸化ストレスに及ぼす影響も明らかでない。そこで我々は、拡張型心筋症患者の心筋において過酸化脂質が増加しているか、さらにcarvedilol投与後に心筋における過酸化脂質のレベルが減少するかどうかを検討した。 【方法と結果】23人の拡張型心筋症患者と13人の正常心機能者(primary arrhythmia患者)の心内膜生検組織において、過酸化脂質の代謝産物である4-hydroxy-2-nonenal(HNE)修飾蛋白質を免疫染色にて検出した。拡張型心筋症患者全例の心筋においてHNE修飾蛋白質が発現していた。その発現は心筋のcytosolに強かった。NIH imageにて陽性面積を測ったところ、340×240μm^2あたり、拡張型心筋症患者:19,807±4,737μm^2、正常心機能者3,734±2,598μm^2と有意に拡張型心筋症患者でひろかった(P<0.0001)。さらにCarvedilol投与を行ったあと(平均22±8mg/day,9±4 months)、11人の患者において再び調べたところ、心機能の改善とともに、HNE修飾蛋白の発現が40%低下した。 【結語】酸化ストレスの発生が拡張型心筋症の心筋において増強していた。Carvediolo投与によって心機能の改善とともに酸化ストレスが減少した(Circulation 2002;105:2867-2871)。
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