NAD依存性ヒストン脱アセチル化酵素SIR2ファミリーの心筋における生理的機能、特にストレス応答との関連を調べるために既に単離したマウスSIR2αとSIR3 cDNAをプローブとしてNorthern blotおよび、それぞれの抗体を作成しWestern blotによって検討した。その結果SIR2αとSIR3が心臓に発現していることを確認した。さらに発生過程の発現量をNorthern blotで調べたところ、両者とも胎児に多量の発現を認めた。そこで、胎児期のどのような組織にSIR2αが発現しているかを検討するために免疫組織化学法で調べたところ、心筋に強い発現が存在することが判明した。定量的PCRを用いた検討により、心筋SIR2αの発現量は発生後期にしだいに減少していくことが判明した。免疫組織化学法によっても発現量の減少を確認した。 虚血による変化について、冠状動脈の一時的虚血による心筋梗塞モデル系をラットで確立した。今後、このモデルを用いてSIR2αの発現がどのように変化するかを検討する予定である。 一方、SIR2αが細胞内のどこに局在して機能しているかについて検討を加えた。免疫組織化学法によって、SIR2αは主に核に局在することがわかった。そこで、GFPをつけた各種のdeletion mutants SIR2αを作成し、COS7細胞に発現させてその局在を調べた。その結果、SIR2αには2つの核局在配列(NLS)が存在し、両者がともに機能していること、どちらかのNLSをdeletionしてNLS 1つにすると細胞質と核の両方に存在すること、2つのNLSを欠損させると細胞質にとどまること、2つのNLSのリジン残基をアラニンに改変すると核に局在しなくなることを見い出し、この2つのNLSがSIR2αの核局在に働いていることを証明した。
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