<心筋組織でのToll様受容体4(TLR4)の発現> 左室収縮障害を伴った心筋炎症例より採取した右室側心内膜心筋生検組織を対象とした。Real-time RT-PCR法および免疫組織化学染色法を用いTLR4とエンテロウイルスゲノムの発現について検索した。対照群と比較し心筋炎群では、TLR4 mRNAの発現が高度であった。44%の心筋炎症例では、plusおよびminus-strand enteroviral RNAを検出し、plusおよびminus-strandの発現量には正の相関を認めた。また、TLR4 mRNAとenteroviral RNAの発現量にも正の相関を認めた。心筋炎症例から採取した心筋組織の心筋細胞では、TLR4蛋白質およびenterovirus capsid protein VP1が陽性像を認めた。さらに、高度な左室収縮障害を伴った心筋炎例では、TLR4 mRNAとenteroviral RNAの発現量が高値を示した。以上より、エンテロウイルスの増幅を介したTLR4の発現は、心筋炎での左室収縮障害に関与している。 以上の研究成果は、clinical science誌に掲載予定となっている(研究発表参照)。 <末梢リンパ球でのTNF-αカスケードの解明> うっ血性心不全(CHF)および急性心筋梗塞(AMI)症例より採取した末梢リンパ球を対象として、末梢リンパ球中のTNF-αおよびTNF-α変換酵素(TACE)の発現について検索した。対象群と比較しCHF群とAMI群では、TNF-αおよびTACE mRNAの発現は高値を示した。CHFでのCD3陽性細胞でTNF-αおよびTACE蛋白質の発現を認めた。さらに、これらのmRNAの発現量は、CHFおよびAMIの重症例で高値を示した。 以上の研究成果は、clinical science誌および岩手医学雑誌に掲載予定である(研究発表参照)。
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