研究概要 |
若手研究(B)補助金により、急性心筋梗塞発症時の冠動脈内炎症とサイトカインの産生について、臨床的研究を行った。対象は、当センターに入院した発症24時間以内の急性心筋梗塞患者36例、男性28例、女性8例、年令62.6±11.9才であった。緊急冠動脈造影施行後、責任血管に対して冠動脈内血栓吸引術を行い、冠動脈血液を採取した。対照として、末梢静脈血液や大動脈洞内血液を用いた。血管内超音波(IVUS)を用いて冠動脈閉塞部位を観察した。Interleukin (IL)-6、Tumor necrosis factor (TNF)-α、Matrix Metalloproteinase (MMP)-9、およびMMP-2をELISA法にて測定した。冠動脈血IL-6濃度は14.4±1.4pg/mlで、冠動脈上流にあたる大動脈洞内血IL-6濃度8.0±1.0pg/ml,末梢静脈血IL-6濃度6.2±0.8pg/mlに比べて有意に高値であり(P<0.001)、閉塞冠動脈局所でIL-6が産生されることが示唆された。冠動脈血IL-6濃度は、末梢静脈血IL-6濃度と相関が認められず、冠動脈内炎症を評価する場合には、冠動脈局所から直接血液の採取が重要であると考えられた。一方、TNF-α濃度は各部位に有意な差違を認めなかった。次に、冠動脈血のIL-6濃度とIVUSによる冠動脈定量的因子との関係を検討した。冠動脈血のIL-6濃度はIVUSより求めた病変部全血管面積(P<0.001)と病変部プラーク断面積(P<0.001)に正の相関を認め、病変プラーク内より、IL-6が産生されることが示唆された。さらに、プラークの脆弱化を促進するMMPについて検討した。冠動脈血MMP-9濃度は。15.2±1.5pg/mlで、大動脈洞内血MMP-9濃度10.3±1.6pg/mlに比べて有意に高値であった(P<0.001)。一方、MMP-2濃度は各部位に有意な差違を認めなかった。以上より、急性心筋梗塞の発症時、IL-6は閉塞冠動脈局所で産生されること、また、活性化されたマクロファージは局所の炎症反応、閉塞起点に関与することが明らかになった。
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