ストレス蛋白の一つであるヘムオキシゲナーゼ(HO)は、酸化ストレスに対し生体防御的に作用していると考えられている。我々は、血管平滑筋に特異的にHOを過剰発現させたマウスの系を樹立したが、このマウスを用いて酸化ストレスが中心的役割を演じている動脈硬化との関わりについて検討するとともに血管リモデリングにおけるHOの病態生理学的意義を解明することを目的とした。 実際の研究計画としては、動脈硬化の発症機転における血管壁HO/CO系の意義を、高脂肪食負荷により作成した高脂血症合併HO過剰発現マウスにより検討し、コントロール群との2群間において動脈硬化と血管壁HO/CO系との関連を解析することとした。例としては上記負荷を与えた状態でPTCA後再狭窄の病態解明のための、ポリエチレンチューブの大腿動脈へのカフ巻きを行うことで新生内膜肥厚形成へのHOの関与、さらにこれら形態学的解析はもとより、ET-1、VEGFといった細胞増殖関連遺伝子や炎症性のサイトカイン等の発現パターンの変化を検討した。 現在研究は進行中ではあるが予備的な研究結果として、カフ巻きを行った新生内膜肥厚形成での検討においては、負荷食を与えない状態での野生型マウスでは術後14日において著明な動脈の内膜肥厚が認められたが、一方過剰発現マウスでは内膜肥厚は軽度であった。また、同時に検討したMCP-1、TNF-αなどの炎症性サイトカインや、TBARSなどの酸化ストレスのマーカーを経時的にみた検討においては野生型マウスでは術後日数とともに発現が認められたのに対し、過剰発現マウスではこれら発現が抑制されていた。今後更なる検討を行い血管リモデリングにおけるHOの病態生理学的意義を解明する予定である。
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