研究概要 |
我々が確立しえた心筋炎惹起性心筋ミオシン特異的T細胞株は、単なる末梢静脈からの注入により血管内皮細胞を超えて心筋組織内に特異的に浸潤でき、かつ、反復処置も可能である。この特徴を利用して、目的遺伝子を同T細胞株内に導入し末梢細胞移入することで、心筋組織内での目的蛋白発現をもたらし治療効果を得ることが理論的には可能である。本研究ではIL-10遺伝子の心筋組織での局所多量発現により心筋炎抑制効果が得られるかを検討することが目的である。 平成14年度の計画目標は、担体としてのT細胞株のクローン化とGFP発現レトロウイルスベクター(pLEGFP-N1,CLONTECH)のT細胞株へのトランスフェクトであった。 1)段階希釈法に基づくクローン化の試みは、同細胞株の低細胞増殖能を反映し、複数の検討にもかかわらず、成功を見なかった。本研究の趣旨を勘案すると、担体として治療遺伝子をトランスフェクトするT細胞株は、細胞増殖能の保持されたbulk culture株が望ましいと考えられた。 2)使用したウイルスベクターは接着細胞であるNIH3T3株に容易かつ高率にインフェクトできた。また、pLEGFP-N1へのIL-10遺伝子挿入およびNIH3T3からのタンパク発現も確認し得た。しかしながら、浮遊細胞であるT細胞株へインフェクトは極めて困難であり、同時培養、遠心下インフェクトのいずれによっても、有効な発現を認めるに至らなかった。現在よりhigh titerのウイルス液の精製に尽力しており、再度標的細胞株へのインフェクトを試みているところである。
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