研究概要 |
事前に慶應義塾大学の倫理審査において研究計画・意義・危険性につき同意を得る。ヒト臍帯血を入手するにあたり、患者夫婦に臍帯血の採取法、危険性や研究結果の発表方法(個人が特定されることはなくプライバシーが保たれることなど)等につき情報提供を行い臍帯血採取の同意を得る。ヒト臍帯血を入手後にヘパリンを混入し凝血を予防する。比重の違いを利用してヒト臍帯血より赤血球、血小板等の不要と思われる細胞を除き単核球細胞のみを分離する。ヒト際帯血の表面抗原を抗ヒト表面抗原抗体を反応させflow cytometoryを用いて解析を行う。解析する表面抗原としてはCD34,c-kit等の造血幹細胞等の未分化な細胞に発現しているもの、CD45等の血球系の細胞に発現しているものや他の幹細胞に発現しているものを用い分化能の予測を行う。ヒト臍帯血より得られた単核球細胞をファイブロネクチン等の基質でコートした培養皿に無血清〜20%牛あるいは馬胎仔血清の条件下に培養する。培養前・後の細胞に対して、上記と同様の細胞表面抗原の解析を行い表現系の変化から分化能を予測する。<心筋細胞への分化誘導>(1)ヒト臍帯血由来多能性幹細胞を新生仔ラット心筋細胞と共培養を行い心筋細胞への分化誘導を行う。(2)ヒト臍帯血由来多能性幹細胞に対して、心筋分化に関与していることが推測されている細胞増殖因子(BMP2,TGFβ,Activin-A, FGF-1/2,IGF-1,LIF, CT-1,PDGF-BB, HGF, EGF等)を添加し、心筋細胞への分化能を観察する。また我々が骨髄由来の間葉系幹細胞より心筋に分化した際に用いた脱メチル化剤5-アザシチジンを添加し心筋細胞への分化能を観察する。得られた自己拍動を開始した細胞に対し、心筋収縮蛋白であるアクチン、ミオシン重鎖、ミオシン軽鎖、ANP、BNPの発現等を解析する。さらに心筋特異的転写因子である。Nkx2.5、GATA4、Tbx5、MEF2C、TEF-1遺伝子等の発現をNorthern blot法やRT-PCR法により解析する。自己拍動を開始した心筋細胞をガラス微小電極法により活動電位を記録する。<心筋梗塞モデルに対する細胞治療>免疫不全マウスを用いて心筋梗塞モデルを作成する。分化誘導後の心筋細胞あるいはヒト臍帯血由来多能性幹細胞を心筋梗塞部位周辺の心筋に移植(注射)を行う。その後、時間経過に従い心臓組織標本を作製し、免疫染色やin situ hybridysationを行い移植細胞の生着の有無等を観察する。また移植により、心筋梗塞のために低下した心機能の改善を超音波検査心臓カテーテル検査等により、また生命余後についても検討する。
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