ラット心筋梗塞モデルを作成し、Sham群、GM-CSF投与Sham群、心筋梗塞(MI)群、GM-CSF投与MI群につき、平成15年度においてはGM-CSF投与による梗塞部および非梗塞部の線維化に及ぼす影響について経時的に検討を行った。今年度は、Sample数を増加し、前年度の結果の再確認を行うとともに、梗塞部へのマクロファージの浸潤の程度につき評価を行った。 GM-CSF投与による形態学的変化を観察するためMI作成後7、14日後に心臓を摘出し、ヘマトキシリン・エオジン染色を行った。結果、7、14日後の検体ともGM-CSF投与MI群はMI群に比して、梗塞部伸展に伴う左室内腔の拡大と中隔の肥厚を認めた。また、マロリーアザン染色を行い、各群における梗塞部、非梗塞部の線維化の程度につき肉眼的評価を行った。結果、GM-CSF投与MI群では、急性期には線維化がMI群に比し抑制されていたのに対し、MI作成後14日後には逆に線維化を強く認めた。梗塞部、非梗塞部へのマクロファージ浸潤の程度を評価するため、抗ED-1抗体を用いて免疫組織染色を行った。結果、GM-CSF投与MI群において、梗塞部に抗ED-1抗体陽性マクロファージの浸潤を強く認めた。これらの結果と過去2年間の結果を合わせて考えると、GM-CSF投与が心筋梗塞後の梗塞部における線維化の過程に強く影響を及ぼし、線維化はマクロファージの浸潤の程度と密接な関連があると考えられた。GM-CSFは、梗塞後の心筋局所の炎症と治癒過程を修飾することにより心筋線維化の過程に変化をもたらし、結果として左室リモデリングを加速する作用を有する事を確認した。
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