研究概要 |
[背景]マウスに対する開胸下でのiNOS遺伝子心筋内注入が、iNOS蛋白を誘導しその活性を上昇させ心筋梗塞巣縮小効果をもたらし、その中ではiNOS蛋白のみでなくCOX-2蛋白も同時に誘導され、この心筋保護効果が二つの蛋白に依存していることが報告されている。[目的]臨床上実践的な方法としてウサギにおいて経カテーテル下によるiNOS遺伝子心筋内注入が同様に心筋梗塞巣縮小効果をもたらすかを検討した。[方法]Needles付きバルーンにより経カテーテル的に心内膜側にE1,E2aおよびE3部分を欠損させたアデノウィルス5をVectorとしたiNOS遺伝子を注入し72時間後に開胸し30分間冠動脈結紮24時間再灌流を行った。[結果]3x10^7pfuのiNOS遺伝子注入により、72時間後にiNOS活性生はLacZ注入後の心筋に比し3〜4倍に増幅され、心筋内NOx濃度は約1.4倍に増幅されていた。しかしiNOS遺伝子心筋内注入ではCOX-2蛋白の合成は促進はなく、30分虚血24時間再灌流による心筋梗塞巣もLacZ注入後と差をみとめなかった。そこでiNOS遺伝子治療処理下のウサギの心筋梗塞作成時にプロスタグランジンE2(PGE2)を静脈内注入したところ心筋梗塞巣は約40%縮小した。iNOSが誘導されていない状態ではプロスタグランジンE2の効果はなく、またこの状態でPGE2とNO供与体を同時投与しても心筋保護効果は観察されなかった。[考察]iNOS遺伝子治療とPGE2全身投与により心筋梗塞巣縮小効果が観察され、NOとPGE2が協調して保護効果を発現していた。PGE2は外部からの投与で十分であったが、心筋内iNOS由来のNOは外因性NOでは代用されず心筋局所での活性化が必要であった。
|