活性酸素種は全身性炎症性疾患としての動脈硬化発症に中心的役割を果たすが、そのin vivoにおけるmain sourceは明らかでない。多核好中球は循環血中に豊富に存在し、respiratory burstの際に、極めて大量の活性酸素種を放出する体内最大の酸化ストレス工場である。スタティンにはその強力なLDL低下と独立して、多くのin vitroの実験系において多彩な血管保護作用を有することが示唆されていることから、好中球-血管内皮の機能的連関がスタティンにより改善しうるかについて、臨床的検討を行った。In vitro実験:高脂血症患者に対し、HMG CoA還元酵素阻害剤(fluvastatin 20mg)または陰イオン交換樹脂(colestimide 3g)を3ヶ月間クロスオーバーデザインにて投与した。血管内皮機能は、colestimide投与後は不変であったが、fluvastatinはこれを著明に改善した。またfluvastatin投与により好中球活性酸素種産生能は有意に低下したが、colestimideによっては変化を認めなかった。さらにfluvastatinにより明らかにLDL酸化抵抗性が改善したが、colestimideはこれに影響を与えなかった。ex vivo実験:高脂血症患者の好中球は培養内皮細胞接着を亢進させeNOSの燐酸化を抑制するが、fluvastatin服用により何れも著明に改善した。以上の結果は、「全身を循環する活性化された炎症細胞が、直接或いは酸化ストレスを通じて内皮傷害をもたらし動脈硬化病変をきたす」という極めてユニーク且つダイナミックな仮説を支持し、新しい抗動脈硬化戦略を提示する。
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