ヒトリンパ球移植による自己免疫モデルマウスの検討 ヒト末梢血液中の精製リンパ球をC.B-17/1cr-scidマウスへ移植し、移植6ヶ月後に開胸して心病変を観察した。対象患者は、(1)健常者(CTL群)10例、(2)抗M2受容体抗体を有する拡張型心筋症患者(DCM群)10例、(3)抗M2受容体抗体を有する慢性心房細動患者(AF群)10例、とした。移植6ヶ月後の心体重比(mg/g)は、CTL群4.12±0.38、DCM群4.38±0.55、AF群4.34±0.48であった。開胸前の心エコー図検査では、CTL群と比較し、DCM群とAF群において有意な左室壁厚の増加を認めた。しかし何れの群においても心筋HE染色では、有意な炎症性細胞浸潤は認めなかった。 エピトープ反復免疫による拡張型心症モデルラットの検討 昨年度より自己抗原の反復免疫をラットに実施してきた。抗原は、(1)対照群、(2)β1受容体、(3)M2受容体、および(4)Na-K-ATPaseポンプの3種のエピトープペプチドで、各群10匹ずつを設定した。1年間の免疫期間内では、全例で死亡例は観察されなかった。免疫1年後の開胸前の心エコー図所見は、対照群以外の全3例で左室拡張末期径の増大が認められたが、各群で有意差はなかった。心体重比も同様の結果であった。またM2受容体群では10例中7例で上室性期外収縮を、Na-K-ATPase群では有意な徐脈傾向を認めた。 自己抗体の持続投与ラットにおける心病変の検討 前年度と本年度に実施されたSCIDマウス移植実験で有意な心肥大が観察された患者血清から特異的免疫グロブン(IgG)を精製した。対象は、(1)健常者(CTL群)2例、(2)抗Na-K-ATPase抗体を有する拡張型心筋症患者(NKA群)2例、(3)抗β1受容体抗体を有する拡張型心筋症患者(beta群)2例、とした。各群のIgGを浸透圧ミニポンプによって、健常ラット皮下より2ヶ月間投与した。心体重比は、CTL群とbeta群との間に有意差はなかったが、NKA群で増加傾向を認めた。
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