1.レチノイドによるニワトリ胚漿尿膜の形態変化と構成細胞の変化:6.5日日胚の漿尿膜は漿膜上皮細胞層、微小血管層、間充織細胞層、尿膜上皮細胞層の4つの異なる層から成る。免疫染色の結果から、レチノイド処理した漿尿膜では微少血管の形成が抑制され、通常微少血管が形成される領域中に存在する内皮細胞が減少し、逆に平滑筋細胞が異常に増加することを見出した。また、画像解析の結果から、レチノイド刺激により微少血管のネットワーク形成(特に血管の分岐)が約35%まで抑制されることがわかった。 2.レチノイド刺激したニワトリ胚漿尿膜における血管形成制御因子の発現パターンの変化:マイクロダイセクション法によって、漿尿膜の微少血管層からRNAを回収し、RT-PCRを行った。その結果、レチノイド刺激によりFlk-1遺伝子の発現が抑制され、平滑筋型α-アクチン遺伝子の発現が促進されることが確認された。現在、VEGFやangiopoietin等の遺伝子発現を解析中である。 3.レチノイド刺激による血管前駆細胞の分化に与える影響:レチノイドは、ES細胞由来Flk-1陽性細胞の内皮細胞・平滑筋細胞への分化の割合にはほとんど影響を与えなかったが、内皮細胞と平滑筋細胞の接着及び3次元培養における管腔形成を抑制し、このとき血管リモデリング制御因子であるangiopoietin-2の遺伝子発現が促進することを見出した。現在、RNAiの導入やangiopoietin-1の添加によりangiopoietin-2の作用をブロックすることで、レチノドの血管形成阻害効果がレスキューされるかどうか検討中である。 4.移植Flk-1陽性細胞によるin vivo血管形成モデルの確立:LacZを発現するFlk-1陽性細胞を4.5日目のニワトリ胚に移植し、2日間インキュベート後にX-gal染色にて検出したところ、頭皮下及び奨尿膜に数十個の移植細胞が検出され血管様(網目)構造を形成することを確認した。現在、さらに効率の良い移植方法を検討中である。
|