研究概要 |
Ph1陽性ALLにおけるBCR-ABLとBACH2を介した発癌機構を明らかにする目的で研究を行い、平成14年度は以下のことが明らかとなった。 BACH2の標的遺伝子を解析するために、BACH2が発現していないB細胞株RAJIとレトロウイルスベクターを用いてBACH2を過剰発現させたRAJI細胞亜株との間の遺伝子発現量の差をマイクロアレイ法で解析した。BACH2を過剰発現させたRAJI BACH2 #67株と、対照となるRAJI pDL #3株に由来するmRNAを用い、約7000の遺伝子について、発現量の差異をマイクロアレイ法によって検索し、両細胞株の間で発現量の差が2倍以上である12個の遺伝子を見い出した。12個の遺伝子は全て、対照に比してRAJI BACH2 #67株において発現が低かった。次に、ノーザン・ハイブリダイゼーション法でその12個の遺伝子の発現を解析した。その結果、A1、EBI-3、aldolase C, seven in absentia homolog 2 (Siah2)の4つの遺伝子においてはBACH2過剰発現株において対照と比較して発現量が低下していることが確認された。これらの遺伝子の中で、特にアポトーシスを抑制する機能を持つBCL2関連遺伝子A1に注目して実験を進めた。まず、A1遺伝子の構造を決定し、BACH2がA1の発現を直接制御していることを、BACH2-MAFK発現ベクターを作製し、電気泳動移動度シフト解析およびプロモーター機能解析によって検索した。その結果、A1の5'非翻訳領域、イントロン、3'非翻訳領域には、NF-E2配列に相同性の高い配列が7箇所存在し、BACH2-MAFKヘテロ2量体は、転写開始点から約8.5kb上流に存在するNF-E2配列を介して直接転写を抑制していることが示された。
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