研究概要 |
初年度の実験計画予定では、造血幹細胞移植後のウイルスの再活性化を評価するシステムを確立することが主目標であった。実際には、アデノウィルス(以下ADVと略)、サイトメガロウイルス(以下CMVと略)、BKウイルス(以下BKVと略)を特異的にPCRで増幅する部分を確認した。更には、リアルタイムPCRという比較的新しいPCRを行い、造血幹細胞移植後の免疫抑制状態に伴うウイルス再活性化に伴う極微量のウイルスDNAコピー数の増減を評価できるようになった。造血幹細胞移植後の臨床検体を用いて各々のウイルスゲノム量を1週間毎の経過をおって測定中である。途中経過ではあるが、使用する免疫抑制剤の種類(サイクロスポリン、抗胸腺細胞グロブリン、メソトレキセート、FK506など)、GVHDの程度、HLAの一致度などにはよらず、ある一定の頻度でADV, BKVのウイルスゲノム量が増多し、自然に消失する傾向にあった。しかしながら明らかにウイルスが再活性化しウイルス血症まで起きているのは事実であり、この現象が造血幹細胞移植という特別な免疫抑制の下で観察されるのかを今後明らかにしていく必要がある。また疫学的には、小児の造血幹細胞移植患者の方が成人症例に比べアデノウイルス感染症が多いとされるが、.小児といえとも乳児から思春期症例まで含まれるため、次年度は成人症例にも幅を拡げ大規模な解析へと繋げていく予定である。
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