研究概要 |
マイクロビーズを用いたサイトカイン測定法は、僅かな検体(50μl)で複数のサイトカインを同時かつ比較的迅速に測定出来ることから、臨床的な利用が進められている。 我々の測定では、急性脳炎における血清中のサイトカイン変動は少ないことが多かった。小児では、検体採取量の少なさから検査項目の制限が多く、後方視的にも特殊検査を行えないことが多いが、マイクロビーズを用いたサイトカイン測定法では0.1ml程度の検体残量で十分に多項目測定が可能であった。特に髄液検査では、必要検体量の少なさを生かして測定することができた。この測定により、血清と髄液のサイトカイン値を同時に比較することにより、熱性痙攣では血中IL-6およびIL-8値が髄液より高値であり、急性脳炎ではその逆に髄液中IL-6およびIL-8値が血中より高いことが確認された(データ投稿準備中)。いずれの症例も髄液細胞数の上昇は伴っておらず、今後に臨床応用できる結果と考えている。 例外として、急性脳炎の亜型である"Hemorrhagic shock and encephalopathy syndrome"というDICと脳症を示す症候群では血中のIL-6,IL-8、INF-γの異常高値が見られ、急性脳炎・脳症であっても全身性病態から生じる脳障害が混在していることが推測された。 マウスでの実験的脳脊髄炎での測定は、局所病態が強いため血中のサイトカイン変動は見られなかった。今後に、ラットでの髄液中サイトカイン測定を進める予定である。
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