基礎研究として、以下の点につき文献的に検討し、臨床上の観察を行った。 1)小児の痛みの程度を評価する方法として有用なスケール、乳幼児でも使える指標があるか。 2)鎮痛のために用いられる局所麻酔および静脈麻酔薬の作用、副作用、投与量について。 3)静脈麻酔による鎮静を行う上での安全性を確保するために、必要な物品・薬剤・環境整備。 その後、骨髄穿刺、腰椎穿刺時に静脈麻酔にて鎮静を行い安全性と苦痛緩和効果について検討した。 1)対象は入院中の児で本人・家族の希望した9人のべ56回。従来の局所麻酔に加え硫酸アトロピン(0.01mg/kg)、ミダゾラム(0.3mg/kg)、ケタミン(1mg/kg)による鎮静を行い副作用を検討した。全例容易に穿刺でき、中止例はなかった。不穏・興奮が5回みられ、うち1回は腰椎穿刺後の安静が保てず鎮静剤を追加した。その他酸素飽和度90%以下が3回、一過性の血圧低下、四肢硬直、吃逆がそれぞれ1回認められた。 2)対象は治療中・治療終了後2年以内の5歳以上の児。全例病気の説明を受け、12年以降発症例はイラストを用いて病態と検査の必要性・方法が説明されている。5段階のface scaleで苦痛の程度をアンケート調査した。12名が回答、骨髄穿刺では鎮静の有無で差がなかったが、腰椎穿刺では鎮静を受けた児の方が苦痛が軽かった、また鎮静していない児の中で比較すると、12年以降例は11年以前発症例と比べ苦痛が軽かった。これは充分な説明で不安が軽減したためと考えられた。 以上の結果を、第105回日本小児科学会(2002年4月)、およびInternational Society of Pediatric Oncology Meeting (September.2002)で発表した。
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