前年度の研究により、静脈麻酔下での骨髄穿刺・腰椎穿刺法の安全性、および鎮静を受けた児と受けなかった児において苦痛に差があるかを明らかにした。その結果、鎮静を受けない場合でも、十分な説明をしてあれば不安が軽減して苦痛も少なくなることが判明した。 そこで本年度は、前年度の検討を引き続き継続すると共に、意識下での軽い鎮静の効果や、不安を和らげる環境などを検討を開始した。後半は、チャイルドライフ・スペシャリストの協力を仰いで、児への働きかけや環境整備などの検討を開始した。 また、研究をさらに掘り下げるためには、小児の痛みやQOLについての検討が必須である。そこで、特にコミュニケーションをとるのが難しく、年長児に比べ研究が遅れている幼児について、1例をもとに深く考察した。 対象とした例は、神経芽腫全身多発転移で、激しい痛みを伴った3歳の男児である。薬剤による激痛のコントロールに加えて、本人の望みや家族背景などをトータルに捉えて、ターミナルケアを行った。在宅ケアに移行してから精神的安定が得られて疼痛が軽減したことにより、児が安心できる環境を作ることが、疼痛の軽減に重要であることが示唆された。 また、3歳でも言葉により意思表示ができるが、言葉のみでのコミュニケーションのみでそれに答えるだけでは不十分であり、非言語吋的コミュニケーションがQOL向上のために重要であると考えられた。 以上の結果を小児がん学会誌に報告した。(第40巻4号:558-562、2003)
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