脳波デジタル解析と臍帯血マーカーとを用いた脳室周囲白質軟化症の発症機構の解析

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14770357
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 奥村 彰久 名古屋大学, 医学部附属病院, 助手 (60303624)
• キーワード: 早産児 / 脳室周囲白質軟化症 / 脳波 / ANP / BNP

研究概要

早産児において、デジタル情報解析を用いて算出したの脳波のデルタ成分の振幅と、臍帯血中のANP・BNP値との関係について検討した。
対象は、在胎週数29-32週の早産児24例である。出生時に臍帯血を採取し、血清中ANP・BNP値を測定した。初回脳波は全例で出生後48時間以内に記録し、解析に用いた。脳波は、解析プログラムfocusを用いて高速フーリエ変換し、脳波パワーの平方根を振幅として解析した。以前に報告した方法と同じく単極誘導を用いて解析した。双極誘導にて高振幅徐波が連続的に出現しており、かつアーチファクトの混入がない10秒間の脳波の断片をそれぞれ6箇所抽出し、その平均値を算出した。今回は、0.53-1Hz・1-2Hz・2-3Hz・3-4Hzの4周波数帯域について検討した。新生児期の頭部エコーで異常を認めずかつ修正1歳時に正常発達を確認した20例を正常群、頭部エコーで深部白質に嚢胞形成を認めた4例をPVL群とした。統計学的解析には、Mann-WhitneyのU検定を用いた。
ANP値は、正常群で中央値45pg/ml(10-124pg/ml)、PVL群で中央値38pg/ml(13-88pg/ml)で有意差を認めなかった。BNP値は、正常群で中央値65pg/ml(5-308pg/ml)、PVL群で中央値87pg/ml(8-195pg/ml)で有意差を認めなかった。デルタ波の振幅は、0.53-1Hzの成分ではPVL群が正常群より有意に低値であった。デルタ波の振幅と臍帯血ANP・BNP値との間には明らかな相関を認めなかった。この結果は正常群単独で検討しても同様であった。

研究成果

• [文献書誌] Okumura A, Toyota N, Hayakawa F, Kato T, Maruyama K, Kubota T, Kidokoro H, Kuno K, Watanabe K.: "Cerebral hemodynamics during early neonatal period in preterm infants with periventricular leukomalacia"Brain and Development. 24. 693-697 (2002)
• [文献書誌] Okumura A, Hayakawa F, Kato T, Kuno K, Watanabe K.: "Developmental outcome and types of chronic stage electroencephalographic abnormalities in preterm infants"Developmental Medicine and Child Neurology. 44. 729-734 (2002)
• [文献書誌] Maruyama K, Okumura A, Hayakawa F, Kato T, Kuno K, Watanabe K.: "Prognostic value of EEG depression in preterm infants for later development of cerebral palsy"Neuropediatrics. 33. 133-137 (2002)
• [文献書誌] Kubota T, Okumura A, Hayakawa F, Kato T, Itomi K, Kuno K, Watanabe K.: "Combination of neonatal electroencephalography and ultrasonography : sensitive means in early diagnosis of Periventricular leukomalacia"Brain and Development. 24. 698-702 (2002)
• [文献書誌] 奥村彰久: "新生児脳波の特徴"波. 26. 206-207 (2002)
• [文献書誌] 奥村彰久, 加藤徹, 早川文雄, 渡辺一功: "脳波と閃光刺激視覚誘発電位との組み合わせによる脳室周囲白質軟化症の早期診断"日本小児科学会雑誌. 106. 1766-1770 (2002)