脳波デジタル解析と臍帯血マーカーとを用いた脳室周囲白質軟化症の発症機構の解析

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14770357
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 奥村 彰久 名古屋大学, 医学部附属病院, 助手 (60303624)
• キーワード: 早産児 / 脳室周囲白質軟化症 / 脳波 / ACE / セレクチン / 酸化ストレス

研究概要

平成14年度までの研究により、脳波デジタル情報解析についてはその有用性を明らかにできた。すなわち、急性期の異常の検出にはデルタ波では0.53-1Hzの成分、シータ波では4-6Hzおよび6-8Hzの成分の解析が有用であった。一方、昨年度までの研究では臍帯血を用いて心負荷マーカーであるANP・BNPを測定したが、脳室周囲白質軟化症との関連はみられず有用でないことが明らかになった。したがって、今年度は新たな臍帯血マーカーの検索の準備を進め、以下のような計画で検体が集まった時点で検討を行うこととした。
脳室周囲白質軟化症の患者では出生後早期に一過性の乏尿がみられ、出生前の血流再分配による腎前性腎不全の存在が示唆される。この現象に着目し、腎動脈の収縮と関連するACEを測定する。併せて出生後早期の腎血流パターンについて検討する。セレクチンは、脳炎・脳症などにおいて血管内皮障害マーカーとして注目を浴びている。脳室周囲白質軟化症にも血管内皮障害は関与している可能性があり、セレクチン値との関連がないか検討する。また、脳室周囲白質軟化症には虚血の関与が考えられ、脳障害の発生には酸化ストレスが関与している可能性がある。脳室周囲白質軟化症において酸化ストレスが証明できれば、エダラボンなどのラジカルスカベンジャーを治療薬として使用できる可能性もある。グルタチオン・エイコサノイドにより酸化ストレスを検討し脳室周囲白質軟化症との関連を調べる。
これらの研究についてはIRBでの承認を得ており、現在検体の集積を行っている。

研究成果

• [文献書誌] Okumura A, Hayakawa F, Kato T et al.: "Abnormal Sharp Transients on Electroencephalograms in Preterm Infants with Periventricular Leukomalacia."The Journal of Pediatrics. 143. 26-30 (2003)
• [文献書誌] Okumura A, Kubota T, Toyota N et al.: "Amplitude Spectral Analysis of Maturational Changes of Delta Waves in Preterm Infants."Brain and Development. 25. 406-410 (2003)
• [文献書誌] Hayakawa M, Okumura A, Hayakawa F et al.: "Nutritional state and growth and functional maturation of the brain in extremely low birth weight infants."Pediatrics. 111. 991-995 (2003)
• [文献書誌] Suzuki M, Okumura A, Watanabe K et al.: "The predictive value of electroencephalogram during early infancy for later development of West syndrome in infants with cystic periventricular leukomalacia."Epilepsia. 44. 443-446 (2003)
• [文献書誌] Sato Y, Okumura A, Kato T et al.: "Hypoxic ischemic encephalopathy associated with neonatal seizures without other neurological abnormalities."Brain and Development. 25. 215-219 (2003)
• [文献書誌] Sofue A, Okumura A, Hayakawa F et al.: "Sharp waves in preterm infants with periventricular leukomalacia."Pediatric Neurology. 29. 214-217 (2003)