川崎病は血管炎であるため、例え冠動脈障害が急性期に認められなかった症例でも動脈硬化の危険因子と考えられている。しかし本当に川崎病が動脈硬化の危険因子であるのかはっきりしたデーターは存在しない。更に現在、一般的に行われている胸部XP、安静時の心電図、心エコーで動脈硬化の早期診断は不可能である。 本研究は、冠動脈の石灰化を鋭敏に捉えることが可能とされている電子ビームCTを用いて冠動脈病変が存在しない川崎病既往患者に動脈硬化の危険因子である冠動脈の石灰化がどの程度存在するのか、またそれによって動脈硬化の早期診断が可能であるかを検討し、川崎病既往患者の長期フォローアップに役立てようということを目的としている。 対象は目的の趣旨から成人期に達した川崎病既往患者となる。現在まで数例で検査施行しているが、現時点では冠動脈の石灰化が認められた症例は冠動脈瘤を持つ川崎病既往患者のみである。今後、症例を蓄積することで正常と言われている冠動脈に発生する石灰化の発生頻度を検討する予定である。さらに健常日本人の冠動脈の石灰化を電子ビームCTで検討したデーターは存在しないため、年齢、性を一致させた健常日本人対照群にも検査を行い、その冠動脈石灰化の頻度を本研究結果と比較検討する必要がある。 電子ビームCTは、海外では既に成人の動脈硬化の早期診断に用いられており、本研究の結果によっては電子ビームCTが今後、川崎病の長期フォローアップに欠かせない検査項目となる可能性もあると考える。
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