アポトーシスは遺伝子に支配された能動的な細胞死であり、各種のアポトーシス調節因子により様々な段階で調節されている。今回の研究で対象としたアポトーシス関連分子は、Fas、Apaf 1、caspase 3、Decoyreceptor 3、Toso、Bcl2、HIAP2である。 【目的】小児ALL細胞におけるアポトーシス関連遺伝子の発現量と小児ALLにおいて既に知られている細胞生物学的特徴またはその予後とを比較することにより、より正確な予後の予測方法を確立する。 【方法】初診時骨髄細胞より腫瘍細胞cDNAを合成し、定量的リアルタイムRT-PCR法を使用してアポトーシス関連遺伝子の発現量を定量した。結果の解析として既知の予後因子すなわち患者の性、発症年齢、MLL遺伝子発現の有無、初診時白血球数もしくは再発の有無により、アポトーシス関連遺伝子の発現量に有意差があるか(Mann-Whitney U)を検定した。また、アポトーシス関連遺伝子の発現量により予後に有意差があるか(Kplan-Meier法)を検定した。さらにこれらのアポトーシス関連遺伝子の発現量は新たな予後因子になりうるか多変量解析にて分析した。 【結果】乳児ALLにおけるアポトーシス関連遺伝子の発現と予後の関連を検討したところ、アポトーシス促進として機能する遺伝子Fasの発現が高値である群の無病生存率は低発現群に比べ有意に良好であった(単変量解析)。多変量解析でも、Fas遺伝子低発現および白血球数高値が既知の予後因子とは独立の予後不良因子であることが明らかとなった。しかし乳児白血病を除く小児白血病においては、現在のところ有意な予後因子は見つかっていない。
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