研究概要 |
神経系特異的RNA結合タンパク質Huファミリーの中で、最も早期から発現するHuB,比較的後期に発現するHuDのそれぞれの欠損マウスを作成し、その表現系についての解析を行ったHuB欠損マウスでは、胎生10日目頃までは神経系に大きな異常を認めないが、胎生14日頃から大脳皮質の形成不全を認め、生後まもなくほとんどの個体が死亡する。神経幹細胞を多く含む胎生14日目の線条体においては分化および細胞死が減少していたが、出生後まもなくの大脳皮質では逆に細胞死が亢進していた。胎生14日線条体から採取した細胞をneurosphere法により培養すると、神経幹細胞のコロニーは減少していた。しかしながらこれらの細胞を分化誘導すると野生型より多くのニューロンとオリゴデンドロサイトが得られた。これらの結果からHuB欠損マウスでは神経幹細胞からの分化課程において、中途段階にある前駆細胞が細胞死を逃れ、また一方で分化が抑制された結果、前駆細胞が一時的に増加し適切な神経分化が遂行されないため構築異常が生じると考えられた。逆に、HuD欠損マウスでは神経系の形成異常は認めず、成体での運動機能に異常を示した。胎生14日目から採取したNeurosphereの分裂能は亢進し、分化誘導ではニューロンのみが減少していた。この結果から、HuDの成体における機能は、HuBよりも遅い時期での神経細胞の終分化に関与していると考えられた。 以上の結果から、極めて似た構造を持つHuファミリーが、哺乳類の神経分化においてそれぞれ固有の機能を持つことが推測された。
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