研究概要 |
近年、DDおよびHHDの原因遺伝子が相次いで同定され、それらはATP2A2(DD)およびATP2C1(HHD)という、二つの異なるゴルジ小胞体膜上のカルシウムポンプをコードする遺伝子の変異によって起こることが明らかとなった。これらの発見により、臨床的、あるいは病理組織学的にも類似点の多い二つの疾患が、実は原因タンパクのレベルでも類似したカルシウムポンプの異常に起因すること、さらにこれらの疾患は加齢に伴うこれらのカルシウムポンプの量的な不足状態によって発症する(Haploinsufficiency)ことが判明した。また、臨床の場では鑑別が困難な症例や、確定診断に至らない症例でも、これらのカルシウムポンプ遺伝子の変異を検索することにより正確な診断が可能になった。しかし、現在までにこれらのカルシウムポンプ遺伝子の変異パターンと表現型(発症時期、重症度など)の関連性、いわゆる遺伝型/表現型相関関係〕(Genotype/Phentype Correlation)に関する検討は殆どなされていない。また、一般的に遺伝性皮膚疾患では人種間で遺伝子変異の部位やパターンに違いが認められることが知られており、DD及びHHDにおいても遺伝型/表現型相関関係を解析するためには単一人種において多数例を解析することが重要と考えられる。 本研究では、以上のことをふまえた上で、北大付属病院皮膚科の遺伝相談外来で、日本全国から20例以上の日本人DDおよびHHDの症例を集積し、遺伝子変異についての解析を行った。HHDの10例については既にその遺伝子変異を解析して論文にまとめている(Yokota K, et al. J Invest Dermatol 118:550-551,2002)。DDの10例については現在解析が終了して、論文を投稿中である。
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