研究概要 |
アンジオテンシン転換酵素遺伝子には,イントロン16内にAlu様配列(287bp)の挿入/欠失(Insertion/Deletion : I/D)多型が報告され,II型,ID型,DD型と表現されている。DD多型では血漿アンジオテンシン転換酵素活性が他の遺伝子型に比べ高値を示すことから高血圧症や虚血性心疾患などの危険因子と考えられている。採取した血液を用い、PCR法によりアンジオテンシン転換酵素の遺伝子多型おいてII型,ID型,DD型の表現型の解析を行った。アンジオテンシンIIが結合する細胞膜貫通型受容体であるアンジオテンシンII 1型受容体の遺伝子多型の検索については,1166塩基のアデニン(A)からシトシン(C)への変異が高血圧との関連が指摘されている。採取した血液を用い、アンジオテンシン1型受容体この塩基を含む領域をPCR法により増幅し,制限酵素により消化し、A1166C変異により新たに制限酵素認識部位が生じDNAが切断されることから,アガロースゲル電気泳動を行うことにより,AA型,AC型,CC型をバンドパターンとして検出し、1型受容体の遺伝子多型を解析した。真性ケロイド患者4人、座瘡1人につき検査することができた。血中アンジオテンシンII濃度はケロイド患者で6、5、3、8pg/ml(正常値22pg以下)、座瘡患者で6pg/mlと正常範囲内であった。血中アンジオテンシン変換酵素値はケロイド患者で16.0、14.3、18.0IU/l(正常値8.3-21.4IU/l)、座瘡患者で12.7IU/lと正常範囲内であった。アンジオテンシンII 1型受容体の遺伝子多型は、ケロイド患者および座瘡患者全例でA/A型であった。アンジオテンシン変換酵素遺伝子のI/D多型については、ケロイド患者4人ともID型、座瘡患者はII型であった。以上の結果、アンジオテンシン変換酵素のID遺伝子多型が真性ケロイド発症の一因となっている可能性が示唆された。平成15年度はさらに症例の蓄積に努めたい。
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