平成14年度はアトピー性皮膚炎患者よりサクションブリスターにて表皮細胞を分雌すること、表皮細胞におけるTARC/CCL17の制御を更に明らかにすることが大きな課題であった。サクションブリスターについては、患者より表皮細胞をシート状に分離したが、細菌などのコンタミネーションのためか培養2日後には死んでしまっている例が多く、生存のための培養方法および採手法に更なる工夫が必要と考えられた。またTARCの制御に関しては、表皮細胞のcell lineであるHaCaT細胞を用いてさらに解析したところ、TNF-αとIFN-γで産生されたTARCはTh2タイプのサイトカインであるIL-4によって濃度依存的に抑制されるという興味深い結果を得た。TARCはin vitroではT細胞や線維芽細胞からはIL-4により産生が増強することが報告されているが、表皮細胞はTARC産生という点に関してはこれらの細胞と異なる制御を示しており、実際の生体内においても特異な産生制御を有する可能性が示唆された。更に平成14年度はアトピー性皮膚炎と類似の病態を示す水疱性類天疱瘡と菌状息肉症についても血清TARC値を測定した。その結果両疾患ともに血清TARC値は健常人と比較し有意に高値であり、治療により皮疹が改善すると値の低下を示した。また両疾患ともに他の病勢を示すマーカーを有意な相関を示し、血清TARC値が疾息におけるマーカーとなりうることが新たに解った。
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